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医療ニュース 2007/12/19

医療関連予算 機械的削減の限界が露呈

医師看護師の不足が深刻化し、「医療崩壊」という声すらある。こうした現状を考えれば診療報酬の一定の引き上げもやむを得まい。
来年度予算案の閣僚折衝で、診療報酬のうち、治療の技術料などに充てる「本体」部分については、0・38%引き上げることが決まった。本体部分は2002年度以来、引き下げか現状維持が続いていた。プラス改定は8年ぶりだ。医療費の国庫負担を約300億円増やすことになる。救急医療や産科、小児科など、勤務が過酷で医師不足がより顕著な分野に配慮すべきだ、との声が、今回の引き上げにつながった。報酬の具体的な配分を決める中央社会保険医療協議会は、メリハリのある議論を展開して、配分先を大胆に見直す必要があろう。医療をはじめとする社会保障関連の予算折衝はほぼ決着した。しかし、従来になく苦し紛れの措置が目立った。社会保障費は、高齢化によって年に約8000億円ずつ自然に増える。この伸びを毎年2200億円ずつ圧縮する、というのが、政府の方針になっている。
厚生労働省は、診療報酬の「薬価」部分を1・2%引き下げたほか、安価な後発薬の使用促進などで計約1500億円を抑制することにした。
問題はその先だ。
厚労省は、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険への国庫補助を1000億円削り、その分を大企業の健保組合と公務員の共済組合に支援させることで、診療報酬本体の引き上げ財源を含め、帳尻を合わせた。大企業の健保組合などが中小企業の健保組合を支援する、と言えば聞こえはよいが、国庫負担分を民間に肩代わりさせるものだ。大企業の健保が反発したのは当然だ。結局、暫定的な窮余の策ということになった。
一方で政府は、来年4月から始まる新高齢者保険で、予定していた窓口負担の引き上げなどを凍結する。このために1700億円の補正予算を組む。新たな歳出抑制策はその場しのぎのものしか浮かばず、前年までに決定していた医療費抑制策は先送りする。これはもはや、機械的削減路線の限界がはっきりした、ということではないのか。
無論、社会保障費が野放図に膨張せぬよう、厳しく監視しなければならない。だが、超高齢社会に必要な予算はきちんと確保すべきである。それには消費税率の引き上げが避けられないことは明白だ。その議論を先送りしたままでは、社会保障の予算編成は毎年、迷走することになろう。


読売新聞より抜粋


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